政略夫婦が迎えた初夜は、あまりに淫らで もどかしい



「また作ったのか」
「あー……えっと、はい」

蓮見さんがぽつりとこぼした声に、はっきりとうなずけなかったのは、若干の罪悪感が生まれていたからだった。

彼が望んでいないことはわかっている。その上での嫌がらせだから、蓮見さんが迷惑に感じれば成功なのはわかっていても、やっぱり進んでやりたいかと聞かれれば答えはノーだ。

正直、手料理が待ち構えているのがわかっていながら、どうして適当な理由をつけて外食してこないのだろうと不思議になる。

いや、理由なんて用意してくれなくても〝今日は外で済ませる〟とさえ伝えてくれれば詰めたりしないのに。

私からすれば、連日の手料理イコール早期の婚約解消なので、こうして夕飯を家で食べてくれるのはラッキーなのだけれど……。

それでも、蓮見さんはそれでいいのかな、だとか、無理してないのかな、だとか今まではしなかったいらない心配をしてしまうのは、絶対に昨日の夜の出来事が原因だった。

〝うー〟でも〝んー〟でもない声を口のなかでうなる。
頭に浮かぶのは、今日の白崎の言葉だ。

『宮澤は、関係を持った男は意識せずにはいられない不器用なタイプだと思ってたんだよ。たとえ酔った勢いでもひと晩過ごしたら気持ちが割り切れない上、うっかりほだされて好きになっちゃうような』

その通りなだけに、なにも返せなかった。