未定だとしても、とりあえず今のところ新妻予定の私をひとり残して、本当に蓮見さんは出張に行った。

それは私としてはラッキーだったのだけれど、冷静に考えてみると疑問が残る。

普通、誰だって会って間もない初対面の人間を自宅にひとりにするのは防犯の面で不安だ。どこを家探しされるかもわからないし、最悪盗みを働かれる可能性だってある。

それだけじゃない。貴金属だけでなく、バレたくない趣味だとかそういうものが見つけられる可能性もあるのだ。

見た目は涼しそうで話し方も淡々としていていかにも仕事できますオーラを醸し出していたけれど、案外危機管理ができていないタイプなのだろうか。

別にアブノーマルな趣味はないけれど、それでも私だったら、信頼関係もなにもない蓮見さんを私の自室に残して出かけたりできない。五分でも嫌だ。

結果的に私が他人のものを勝手に触ったり探ったりするのが嫌だという性格をしているから蓮見さんは助かっただけだと、そんなことを考えながらお風呂からあがりウォーターサーバーからコップに水を注ぐ。

初日こそ、勝手にいいのかな、と一瞬ためらったけれど、十一日経った今はもうそんな遠慮は皆無だ。

それはウォーターサーバーだけでなく、パントリーの中の炭酸水だとか、ティッシュなどの消耗品だとかも同様で、この部屋での生活に気を遣うことがなくなり……つまり、だいぶ慣れてきていた。

炭酸水だとかティッシュやトイレットペーパーに至るまで、実家で使っていたメーカーとことごとく同じなのも、この部屋に慣れるスピードを後押しした。