「高等部の頃って、私色々中途半端だったから宮澤が羨ましかったの」
「中途半端？」
「うん。学力も中の上から抜け出せなかったし、そもそも将来のビジョンがなにもなかったからどこに向かって頑張ればいいのかもわからなくて、モチベーションもなかった」
当時の御園を思い出す。
たしかにいつもどこかつまらなそうだった気がした。
「宮澤は校内でも飛びぬけたお嬢さまなのにそれを鼻にかけないで誰にでも優しくて、クラスの誰よりも真っすぐで必死に頑張ってたから、羨ましかった」
まるで昔を見ているような目で言う御園に、少ししてから笑みをこぼす。
「私だって、ビジョンなんてなにもなかったよ。それどころか自分自身がなんなのかもよくわからなくて、ただ向かう方向もわからずにがむしゃらにやってただけ」
何を始めるのも〝お嬢様〟だからと馬鹿にされたからで、何を辞めるのも同じだった。
そこに私の意思はひとつもなかった。
そう説明すると、御園は意外そうに目を見開き……それから、苦笑した。
「じゃあ、そういう顔してくれればよかったのに。宮澤っていつも無駄に姿勢よくて凛とした横顔だったもん。誰もそんな風に悩んでたなんて思わないよ」
御園は笑った後、まだ笑みの残る顔で続けた。
