「そんなんじゃないよ。大祐さん自身にきちんと惹かれてる。冷たく見えるけど、実際は優しいしよく気も配ってくれる。頼りにもなるし、寄り添おうと努力もしてくれる。これ以上ない人だよ」
さすがにこの発言を本人の耳に届ける気はないので、小声で答える。
目を伏せてスカート部分を整えている御園は口元に笑みを浮かべていた。
「ふぅん。しっかり恋愛結婚なのね。いいなぁ」
高等部の頃以来の『いいなぁ』を聞き、ここからまた〝ちょうだい〟だとかが始まるのだろうかと体が強張ったのだけれど。
「でも、宮澤には合ってるかもね。いつも同年代の男ばかり選んでたけど、正直ずっと違う気がしてたのよね。宮澤って前のめりに突っ込むところがあるし、そういうのを受け止めてくれる年上の方が合ってるんじゃないかなって。まぁ、恋愛対象は好みがあるし放っておいたけど」
御園が続けた言葉に、一瞬声を失ってから口を開く。
「そんなことを思ってたの?」
「うん。なんで?」
キョトンとした顔で鏡越しで見てくる御園に、言いづらさを感じ目が泳ぐ。
「だって、〝いいなぁ〟とか〝ちょうだい〟とか羨んでばかりだったし……そこまで私のことを見てたなんて意外で」
心当たりがあるのか、御園は「ああ」と笑った。



