壁一面の鏡に映った私は、胸から腰までのコルセットとシルクのカボチャパンツという出で立ちで、間違えても大祐さんに見られたくないと思った。
ちなみに、大祐さんはカーテンの向こうで待機中だ。
鈍器になりそうくらい厚みのあるカタログを今頃眺めているのだろう。
「ドレス、うちで作ってくれるなら友達割引しちゃう。ああ、でも、蓮見さんにはそういう誘い文句は効かないかな。宮澤に似合う最高のドレスを仕立ててみせますって言葉の方がよさそうね」
試着するウエディングドレスは、スカート部分がふわっとしたプリンセスラインのものだ。トップはレースがふんだんにあしらわれていて、肩を完全に露出するデザインだった。
御園は慣れた手つきでマネキンからドレスを脱がせると、私に着せていく。
されるがままになりながら御園をこっそり盗み見してみても、昔のようにねだってくる様子はなかった。
大祐さんが〝ロータステクノロジー〟の御曹司だとは知っているはずだし、絶対に〝いいな〟攻撃が始まると覚悟していたのに……と少し拍子抜けもしたけれど、それ以上に安心もした。
どうやら私の考えすぎだったらしい。
でも……。
「〝ロータステクノロジー〟の御曹司なんて、世界的に見てもかなりの優良株よね。やっぱりそこに惹かれたの?」
安心した直後、御園が私にドレスを着せながら、抑えたトーンで聞いてくる。
鏡越しに合った目には今までとは違う雰囲気を感じ、顔をしかめた。



