「蓮見さん……ああ、お母様の方ね、とにかく電話もらってびっくりしてたの。大祐さんが結婚なさったって言うから。ほら、結構ドレスってサイズ測ったり生地とか形選んだりって時間がかかるから、その間ご家族の話にもなるの。それによると大祐さんはあまりそういう話はないって、お母様がガッカリしてる様子だったから」
試着室の中、私にドレス専用のコルセットを締めながら、御園が話す。
そういえば口数の多い子だったと思い出す。
「なのに急に結婚されたっていうからびっくりしたんだけど、相手が宮澤だったなんて二重でびっくり。しかもウエディングドレスのオーダーメイドなんてそうないから、三重とかそれ以上かも」
「御園は、ここで働き始めて長いの?」
高等部卒業後の進路は知らない。
でも大学では顔を見なかった気がして聞くと、御園はコルセットのホックを止めながらうなずく。
「うん。専門学校行ってそれからだから、四年くらい」
「……ねぇ。これ、きつすぎない? サイズ合ってる?」
背中のホックがひとつ止められるたびに締め上げられていく気分だ。
着物とは違う苦しさがある。
中世ヨーロッパの豪華なドレスを身にまとった貴婦人が頭を過ぎる。あの時代もたしかものすごいコルセットをつけていたという話だった気がする。
「合ってるよ。大丈夫だって。慣れるから」
試着室と言っても、奥行き二メートル、幅七、八メートルほど広さがあり、鏡もだいぶ大きい。こういうお店専用の造りなのだろう。
御園と私、それにドレスを着ているマネキンが入ってもまだまだ余裕があった。



