「すごく満足、です」
むしろちょっとツラかったくらいだ、とは言わずに見上げると、蓮見さんこそ満足そうに「そうか」と笑った。
私のおでこに唇を押し付けた蓮見さんが隣に横になる。
すぐに回ってきた腕に抱き寄せられたので、そのまま彼の胸に頬を押し付けた。
まだ駆け足の心音が聞こえてきて心地いい。
気持ちのいい疲労感があり、もうこのまま寝入ってしまおうか……と明日の朝シャワーを浴びる場合の起床時間を考えだしたとき。
「こうしておまえが俺の腕のなかから抜け出そうとしないのは初めてだな」
そんなことを言われる。
その自覚はあった。意識してこういう時間から逃げていたから。
「気分がいい」という蓮見さんに苦笑いをこぼす。
「私なりの自己防衛だったんです。でも、もう必要なくなったので」
いくらほだされてももう問題ない。
だからぐりぐりとおでこを撫でつけていたけれど、そのうちにハッとして顔を上げる。
「そういえば、来週兄が帰国するって話でしたね」
それを聞いたのは、実家での話の中でだった。
父から伝えられた話では、短い期間ではあるものの一時帰国する予定らしい。
「結婚の報告も兼ねて会おうと思ってるんですけど、蓮見さんはどうします?」
「俺も会いたいとは思ってるから、日程が決まり次第、仕事の調整をする」
「兄と会って、蓮見さんのご実家に挨拶に伺って……十一月は忙しくなりそうですね」



