「恋愛結婚なんてしない。恋愛感情なんかもう絶対に信じない。もしも結婚の必要を迫られたら、私は経済力で相手を選ぶ。お金さえあれば誰でもいい」

それは、たしかに私が誰かを好きになり失敗するたびに言っていた言葉だ。

中二から始まり、最後は一年前の二十三歳まで。
二十四年生きてきた中で経験した失恋は五回。最後の三回については、どれも付き合い始めて一ヵ月も経たないうちに相手から一方的に振られた形で、理由は揃いも揃って『ちょっと重いかなって』だ。

純粋な〝好き〟という気持ちに重いも軽いもない。
両想いであるなら、ただお互いにその想いを育んでいけばいいという抗議にも、『重いって、もしかして私の家柄とかが関係してる?』という私の問いかけにも、元彼たちは苦笑いを返すだけだった。

当然納得なんてできなかった。

今は亡き祖父から〝沈黙は金〟と教えられてはきたけれど、唐突で一方的な失恋は到底静かに飲み込めるものではない。

『恋愛結婚なんてしない』『経済力で相手を選ぶ』は、ゆえに漏れた言葉だ。いわば、悔し紛れ。負け惜しみ。負け犬の遠吠えとも言える。

当然、本心は違った。
恋愛に何度失敗しても、やっぱり好きな人と結婚して、幸せな家庭を築きたいと思っていたし実際にそうするつもりだった。

――はずなのに。