「こっちだ」
「はい」
左右にドアが一枚ずつある廊下を進むと白いタイルのリビングダイニングが現れ、あまりの広さに目を見開く。
四十畳……いや、もっとあるかな、と顎にこぶしをおき考える。
南側はほとんどが窓ガラスになっていて、十月の気持ちのいい外気がレースのカーテンを揺らしていた。
このマンションに入ってから、エントランスも通路も空調が効いていて、その閉鎖感に少し萎縮していたため、外の空気が流れ込んできていてホッとする。
元から気管支が強くなく花粉などのアレルギーもあるのだけれど、私の症状にはこもった空気が一番悪い意味で効いた。だからそんな私を思って、父は季節関係なしに窓を開けて換気していた。
外気にホッとするのはそんな環境で育ったせいもあるのかもしれない。
部屋に入って左側にはアイランド式のキッチンと冷蔵庫、ダイニングテーブル、それとおそらくパントリーらしき扉が一枚確認できる。
床も壁も天井も白の中、濃いグレーのキッチンと冷蔵庫が色合い的に綺麗だ。ふたり掛けのダイニングテーブルも似た色合いをしていた。
通路を真ん中として、部屋の右側にあるのがリビングで、六人くらい座れそうなアイボリー色のソファと、黒いガラス天板のローテーブルが鎮座している。
敷かれているラグは白地にベージュでダマスク柄が描かれていた。



