「先週の土曜日、うちの会社に見学に来たとき、蓮見さんがやけに駐車場を注視しているように見えたんです。その時にはもう国木田さんから不審な車について聞いていたから……ってことですよね」

てっきり車に興味があるのだと思っていたけれど、そうではなかったのだろう。
蓮見さんは、コーヒーのカップをテーブルに置きながら答える。

「万が一を考えていただけだ。もしも春乃の会社までつけているようなら、証拠がそろっていない状況ではあるが、声をかけ事実確認をするつもりでいた。ただの偶然ならわざわざ春乃に嫌な思いをさせる必要もないと思い黙っていたが、結果的には話しておけばよかったな。悪かった」
「いえ。蓮見さんが謝ることなんて、ひとつもないです」

私の知らないところで心配をかけていたのだと知り、申し訳なくなる。

国木田さんの話だと、私本人に伝えると必要以上に怖がらせるかもしれないという判断で、蓮見さんに声をかけたということだった。

私はもう大人だし、それなりのことなら自分でも解決できるけれど、陰で蓮見さんと国木田さんが私を気遣ってくれた優しさを思うと嬉しかった。

「でも、白崎には悪いことをしちゃいました」と、ふふっと笑いながら言うと、蓮見さんがこちらを向いた。

「先日の彼か。たしか同期だったな」
「はい。盛岡さんが、蓮見さんと私の関係を誰かがバラしているというような物の言い方をしたんです。その時、一瞬疑っちゃったので、悪かったなって。でもまさかマンション前で見張ってて知ったなんて思いませんでした」