政略夫婦が迎えた初夜は、あまりに淫らで もどかしい



「君だって、好きでもない男と結婚するのは嫌だろう?」

ショックを受けているところに話しかけられハッとする。
視線を上げると、盛岡さんが同情を浮かべる顔で私を見ていた

「それは……」と話し出したはいいものの、そこから先の言葉が出てこない。
それは、そうだけれど、でも蓮見さんは……。

頭のなかでもその先を続けるのに失敗し、眉を寄せた。

〝好きでもない男〟と蓮見さんをうまくイコールで結べず、ちぐはぐなパズルをはめ込んだような違和感が浮かんだ。

それに、さっきの特許の件もあり頭の中が混乱している。
でも、私の感情よりもまずは確認しておくべきことがあると、軽く頭を振って余計な考えを払い落とす。

それから、盛岡さんとしっかりと目を合わせた。

「先ほども申し上げたとおり、提携は会社同士の問題です。私は関係ありません。……ところで、結婚の件はどなたから聞いたのでしょう」

提携の話は社内でも噂になっているけれど、蓮見さんと私の結婚についてはまだ漏れていない。先日、蓮見さんが社長室に来た際目撃した社員はいるものの、誰も確信は得ていないはず。

確実に知っているのは、当事者とその家族……そして柳原さんと白崎くらいだ。

蓮見さんや家族はありえない。柳原さんだって、別れ際の様子を見れば、もうそんなことはしないと思う。

でも、じゃあ……白崎が?

「さぁ、誰だったかなぁ。君の近しい人だっていうのはたしかだけど。契約の件を君から蓮見さんにお願いしてくれるなら教えてもいい」

穏やかな笑みで言われ、唇を引き結んだ。
揺すぶられているだけだ。冷静になった方がいい。

でも、落ち着こうとしても一度生まれた不安は濃い疑惑となっていて消せず、どんどんと心臓の音が早くなっていたとき。