政略夫婦が迎えた初夜は、あまりに淫らで もどかしい



「いや、そうでもないよ。君が蓮見さんに婚約破棄を申し出てくれればいい。一方的に約束を反故にされた蓮見さんはきっと怒って提携の話も揺れる。そこにうちの会社が入り込む隙間ができる。〝ロータステクノロジー〟にはぜひともわが社の後ろ盾になってほしいんだ」
「なんで……」
「聞いた話だと、蓮見さんとは政略結婚で気持ちはないんだろう? まぁ、正直、君のところが持っている特許は魅力的だから、蓮見さんが欲しがる気持ちはわかるんだ。君を手元で押さえておけば宮澤社長だって強くは出ないだろうし、蓮見さんからしたら本当に社のための政略結婚として割り切ってるんだろう。男はそういうことができるからね」

〝特許〟という単語に心臓がギクリとした。
同時に、いつか白崎が言っていた言葉が頭の中でよみがえる。

『でも、政略結婚と言いつつ、提携話と結婚は別契約なんだろ? じゃあなにも蓮見さんも宮澤を選ばなくてもよかったのにな』
『だって、別れるときゴタつくのが目に見えてるだろ。別れ方によっては仕事への影響もあるかもしれない。蓮見さんが結婚する目的が周りを黙らせることっていうのが本当なら、俺だったら仕事で繋がりがあるやつはリスク考えて避けるって話』

白崎の言う通りだ。
蓮見さんなら、絶対にリスクは避ける。
それなのに私を選んだのは……うちの会社が持つ特許が目的だから?