「いえ。同業者とは存じ上げず申し訳ありませんでした。世間知らずでお恥ずかしいです」
それだけに留めると、盛岡さんは笑みを浮かべたままひとつ息をついた。
「なかなかしっかりしたお嬢さんだ。本当に世間知らずならこちらの話も進めやすかったんだけどね」
そう前置きした盛岡さんは、コーヒーを口に含んでから私を見た。
「早い話がね、うちも〝ロータステクノロジー〟の太陽光設備が欲しいと考えてるんだ。ネームバリュー的にもここは譲れないと思ってこちらからも何度も提携話を持ち掛けてみたけれど、首を縦に振ってもらえなくて困ってるんだよ」
盛岡さんが眉を下げる。
「〝レイドバッグホームズ〟はなにも〝ロータステクノロジー〟じゃなくてもこの先も安泰だろう？ 譲ってくれないか？ もしくは、〝ロータステクノロジー〟がうちにも太陽光を下ろしてくれるような契約内容に変更してほしい」
なるほど、そういうことか……と一応の理由を理解する。
たしかに、〝ロータステクノロジー〟の太陽光となればネームバリューだけで顧客の信頼を得られるし、ハウスメーカーからしたら喉から手が出るほど欲しいはずだ。
「それは、会社同士の契約ですので私から言えることは何もありませんし、私が口を挟める問題でもありません。ご存じかもしれませんが、私は一社員として働いているだけですので、そういった契約にはノータッチです。力になれず申し訳ないですが」
謝って話を切ろうとした。
けれど、盛岡さんの笑顔に止められる。
