体系はスラッとしていて背が高い。一八〇センチ近くありそうな体は、今はYシャツとチャコールグレーのスラックスに包まれていた。
ボタンをふたつ開けた首元からは鎖骨が見え、漂う色気に慌ててそこから目を離した。
それと同時に、思いがけず目を見張るほどの美形が現れたせいで言葉を失っていた自分にハッとし、身を引き締める。
うっかり見とれている場合じゃない。
いくら見た目がよくたって、突然ポンと提案された政略結婚をその場で快諾するような人だ。どこかおかしいに決まっている。
私もじっと見つめすぎた自覚はあるので言えた立場ではないけれど、蓮見さんも失礼に感じるくらいにこちらを見ていた。
私の方から目を逸らすのは負けた気がして嫌なので、眼差しに気合いを入れ直す。
いくら政略結婚で、いくらすぐにでも破棄に持っていこうと企んでいても、今日からの同居相手だ。
とりあえず、生理的に無理な相手じゃなくてよかった、と安堵しつつじっと見上げた。
「初めまして。宮澤春乃です」
視線を重ねたまま自己紹介する。
途端、それまで真顔だった蓮見さんがやや不満げに眉を寄せた。
明らかに文句がありそうな顔に首を傾げそうになってから、ハッとして前のめりに口を開く。



