政略夫婦が迎えた初夜は、あまりに淫らで もどかしい



「だったら……」
「私だって、できるならとっくにそうしてた。告白して、蓮見さんの言葉でこの恋を終わらせられたらそれで幸せだとも思った。でも、私みたいな平凡な女が相手にされるわけがない。どう話しかけたらいいのかもわからないし、きっと話も聞いてくれないに決まってる」

悲痛な叫びだった。
柳原さんの声や表情、全部がツラいと叫んでいる。

一年半という、ひとりで抱え続けた時間が想いをこじらせてしまったのかもしれない。
白崎は完全に傍観者と化し、当の蓮見さんは柳原さんを見てはいるものの、声をかける気配はない。全部を聞いていたのに、だ。

そんな蓮見さんをどうかと思いながらも柳原さんを見て口を開く。

「そんなことはないです。……きっと。たぶん。誰だろうと相手が必死な想いを抱えているなら、蓮見さんは足を止めて目を合わせて話を聞いてくれると思います」

言いながら、柳原さんには見えない角度で蓮見さんのYシャツをくいくいと引っ張る。
私と目を合わせた蓮見さんは、意図を理解しひとつ小さな息を吐いたあと立ち上がり、柳原さんと向き合った。

「話があるなら聞く。だが、応えられるかは話が別だ」

ハッキリと言った蓮見さんに、柳原さんは緊張からか目に涙を浮かべ必死に想いを告げたのだった。



「100%振られるってわかってるのにギャラリーのいる前での告白を強要するなんてドSだな」

帰り際、白崎がそう言って笑った。
結局、蓮見さんは、今後の担当については変更を申し出る、というようなことを伝え、柳原さんをそのまま帰した。

部屋を出るとき、柳原さんが私に視線を留め「指も頬もごめんなさい」と謝ったものだから、蓮見さんの視線が怖くてとてもじゃないけれど隣を見上げられなかった。

どちらも本当に柳原さんのせいではない。