政略夫婦が迎えた初夜は、あまりに淫らで もどかしい



「五回は嘘だったかも。最初の二回は、たぶん単純に私自身がダメだったから振られたんだと思うので、正確に言えば三回です」
「三回……」
「両親のせいだって一瞬でも思った自分が情けなくて仕方なくて……涙が止まらなくて、いつまで経ってもお風呂から出られなかった。うらやましいって思いますか?」

微笑んで聞く。
柳原さんは何かを言おうとして、また口を閉じ……そのまま数十秒が経過したとき、玄関が開く音がした。

スリッパも履かずに入ってきたのはスーツ姿の蓮見さんで、後ろに白崎が続いていた。
それを見て、そういえば白崎に連絡を入れていたことを思い出した。

ソファに座っている私を見た蓮見さんは、迷いなく近づくと私の前の床に膝をつく。
そして、私が頬にあてているタオルにそっと手を伸ばした。

私の手を上から包むように触れられると、手のひら側からはタオル越しの氷の冷たさが、甲側からは蓮見さんの手のあたたかさが伝わり、おかしな感覚だった。

「怪我をしたのか?」

珍しく心配そうな顔で聞かれる。

「ちょっと転んでしまって。でも大丈夫です」

実際にそうだから言ったのに、蓮見さんは納得していないような顔で柳原さんに視線を向けるので、慌てて彼の腕を掴んだ。

「本当に私が勝手に転んだんです。朝、めまいが少しあるって言ってたじゃないですか。それが出て、ふらっとしてこのテーブルの角にぶつけちゃったんです」
「電話越しだったが、柳原さんが会話のなかでだいぶ感情的になっていたのは聞き取れた。その時になにかされたんじゃないのか」
「電話……?」

自然と自分の携帯を視線で探す。