「わかってる。柳原さんのひと言は爆発のきっかけに過ぎないし、それまでため込んだ私のイライラを一身に浴びさせるのは申し訳ないとも思ってる。でも、一度だって、意図的に傷つけようとしたなら無関係ではないと思う。違う?」
聞きながら目を合わせると、柳原さんはぐっと黙った。
「この指の傷だって頬だって、痛かった。今だって痛い。でも、見えないところの傷の方がよっぽど痛いの。言い返したくても、ダメだって、おじいちゃんの言葉を思い出して飲み込んだときにできた傷のほうが、ずっと。誰だって、傷つけられたら痛い。当たり前でしょ。私だって、悩んで泣いて今日まで過ごしてきた。それを、わかって」
途中から、ダメだとわかっていた。
こんなのは柳原さんに言うことじゃない。私が勝手にため込んできたうっぷんを浴びせてしまっている。
こんなだとまた〝社長令嬢だから我慢ができない〟って言われるのがわかってるだけに、自分が情けなくて仕方ない。
「あー……もう、ごめんなさい。本当にごめんなさい」
天井を仰いで、両手で顔を覆う。
ひとりで勝手に転んで、怪我をして、情緒不安定に怒って謝って。
はたから見たらそれは滑稽だろうなと自分でも笑ってしまいそうになった。
ひとつ、大きく深呼吸する。
それからゆっくりと目を開き、柳原さんを見た。
「柳原さんには関係ないことですけど、私、好きな人に五回振られてるんです」
それまで呆然としていた柳原さんが〝五回〟という数字にか、わずかに目を見開く。
「社長令嬢っていう私の立場が重いからって。そんなの、私のせいじゃないのにって思いました。でも、仕方ないって飲み込むしかなかった。私は、両親がいたから生まれたんだし、今更そんなこと恨んだって仕方ないんです」
再びタオルを頬につけてから、「あ」と声を出し、柳原さんに苦笑いを向ける。



