「親の会社に入るのが甘えだと言うなら俺だってそうだ。けれどそれを甘えだとは俺は思わない。与えられた場所でどれだけ結果が出せるかで、周りの見方は変わる。こちらが必死にさえやっていれば、生い立ちや立場がどうのとうるさく言ってくるやつは放っておいてもそのうちに消える」
ハッキリとした物言いに、思わず笑みをこぼす。
そんな私にわずかに頬を緩めたように見えた蓮見さんは、ネクタイを結びながら続けた。
「ハウスキーパーは今日の十三時に頼んである。鍵は預けていないから、モニターで確認してから開けろ。仕事ぶりについては信頼できるから、春乃は気にせず寝るなりなんなり好きにしていればいい。ハウスキーパーに調理を任せることに抵抗があるなら夕飯は俺が適当に用意するから、キッチンには立つな」
それが心配からくる言葉だとはわかっていたので、嫌がらせは素直にお休みすることにする。
ハウスキーパーが掃除している間好きにしろと言われても、さすがに、初めて会う人の前で呑気に寝てはいられない。
せっかくならプロの技術を盗もうと思いながら、蓮見さんを送り出した。
携帯が鳴ったのは、十二時五十分。白崎からだった。
今日、私の代わりにモデルハウスの受付をしていたらしいのだけれど、うっかり指を切ったらしい。
救急箱の場所を聞かれたので、「私じゃないんだから」と呆れて笑いながらも場所を説明したところで、インターホンが鳴った。
『あれ。来客?』
電話越しでもピンポーンという明るい音が聞こえたらしい。



