「じゃあ、聞き流してください。あと、馬鹿みたいだとか子どもっぽいだとか思ってもいいですけど口には出さないでください」
「注文が多い。いいからさっさと話せ」
少し嫌そうに眉を寄せた蓮見さんに、苦笑いをこぼす。
だったら言わなくていい、と切り捨てない優しさが嬉しかった。
少し考えたあと、目を瞑り、ゆっくりと息を吸い込んだ。
「金曜日、仕事帰りにお通夜に出たんです。営業部長が担当していた方が亡くなったので、急遽社員でも行ける人は参列するようにと上から言われました。鹿島さんって資産家の方でご自身の家だけじゃなくお子さんの家もうちで建ててくれていて、新しいモデルハウスができるとお祝いにと足を運んでお花を出してくれるような方でした」
普通だったら、家が出来上がったら顧客と営業担当の関係は薄いものになる。それ以降の相談は基本的にはアフターサービスの部署の社員が担当する流れになっているからだ。
けれど、鹿島さんは家の完成後もよく本社にもモデルハウスにも顔を出してくれていた。
営業部長と家に関係するさまざまな談義をする姿は、本社にいる社員誰もが一度は見かけ知っていたと思う。
いつもニコニコとしている鹿島さんの陽気な笑い声を聞くと、こちらまでつられて気持ちが明るくなるようなそんな方だった。
本当に〝レイドバッグホームズ〟の家を気に入ってくれていて、マイホームを考えている知り合いをよく連れてきてもくれていたので、会社としてもとても助かっていた。
そんな鹿島さんが亡くなった。



