〝ロータステクノロジー〟は、世界トップクラスの電子部品メーカーだ。
企業向けネットワークのシステム開発や、医療機器の研究開発まで幅広く手掛けている大企業で、おそらくその企業名を知らない日本人はいない。世界的にもだいぶ名が知れ渡っていると思う。
失礼ながら、母の言った御節の比喩は正しい。
そんな〝ロータステクノロジー〟がなぜ父の会社と提携を結んだのかというと、太陽光発電が理由らしい。
〝ロータステクノロジー〟は、ここ最近太陽光発電の開発にも手を広げていて、一方の父の会社は木造も鉄骨も床暖もライバル社に負けない自信があるものの、太陽光だけ力の入れ方が弱かったゆえの企業提携。
それが両社にメリットになるのは私でもわかるので、なるほど、と納得せざるを得なかった。凹凸が見事にはまっている。
でも、だからと言って同じ席でついで同然にされた結婚話には到底納得できない。
けれど、今更〝経済力さえあればいいなんて嘘でした、ごめんなさい〟は通用しない。
――ならば。
壊すほかない。
「……ここか」
決戦の地は、と心の中で続ける。
知らないうちに逃げられない状況まで追い込まれていたので、こうなればもう飛び込んで壊すしかない。
そう覚悟を決めながらもどうしても踏ん切りがつかず、家を出たのは十六時を回ってからだった。
そこからタクシーを走らせること二十分。
最低限の荷物だけを手に行き着いたのは、見るからに高級そうなマンションだった。



