「お邪魔します」
レイの後に続き、古い日本家屋の玄関
に足を踏み入れると、紫月は控え目な声
でそう言った。
ここは畑からほど近くにある藤井さん
の自宅で、二人は今からこの家のキッチン
を借りることになっている。
赴きのある瓦屋根の建物は、外観こそ
古く見えたのだが、中に入ってみると存外
に新しかった。玄関は昔ながらの土間とな
っており、土間キッチンというのだろうか?
炊事が出来るように石造りの流し台が
設けられている。
その他にも野菜を運ぶアルミ製のリア
カーや農機具などが置いてあり、土間か
ら部屋の中を覗けば、ウネウネと曲がり、
手斧の跡が随所に残る立派な梁や高い
天井、そして、和紙と竹細工で作られた
丸いフォルムのペンダントライトが
見える。
お洒落でノスタルジックな古民家。
藤井さんの自宅は、そんな感じだった。
レイは持っていたカゴを足元へ置くと、
土間から家の奥へ向かって声をかけた。
「藤井さん、キッチン借りるよ!」
その声に耳を澄ますと、すぐに廊下を
歩く足音が聞こえてきた。
「ああ、お帰りなさい。どうぞ遠慮なく
使ってください。何もお構いできませんが、
ちょうど芋が焼けたのでそこに置いておき
ました。安穏芋の焼き芋です。旨いですよ」
土間の隅にある、二人掛けのテーブルを
指差し、藤井さんが目を細める。アルミ
ホイルで包まれたそれに触れてみれば、
まだ温かく煤のようなものがついて
いた。
「焼き芋かぁ、ありがとう。さっそく
いただくよ。僕もこれ、お土産に」
そう言って軍手を外すと、リュックの中
から細い紙袋を取り出す。それを藤井さん
に渡すと、レイは腰に手をあてて言った。
「それ、好きだよね?」
「獺祭ですか。もちろん、大好きですよ。
さっそく、今日の晩酌にいただきます」
袋の中を覗いた藤井さんは、日本酒の
瓶を取り出し、満面に喜色を湛える。
二人の親し気なやり取りを見ながら傍
に突っ立っていると、藤井さんは紫月に
声をかけてくれた。
「私は作業場の方にいますので、ここは
ゆっくり使ってください。冷えるような
ら、居間を使ってもらって構いませんよ。
うちの野菜をじっくり堪能していってく
ださい」
「ありがとうございます。お言葉に甘え
させていただきますね」
そう答えると、彼は紙袋を抱え、家の奥
へと戻って行った。
「やっぱり、いつもやってるだけあって、
手早いわね」
刃の部分が四角い菜切り包丁で、サクサク
と大根や人参を太めの千切りにしていくレイ
を隣で見守りながら、紫月は感心して言った。
レイの後に続き、古い日本家屋の玄関
に足を踏み入れると、紫月は控え目な声
でそう言った。
ここは畑からほど近くにある藤井さん
の自宅で、二人は今からこの家のキッチン
を借りることになっている。
赴きのある瓦屋根の建物は、外観こそ
古く見えたのだが、中に入ってみると存外
に新しかった。玄関は昔ながらの土間とな
っており、土間キッチンというのだろうか?
炊事が出来るように石造りの流し台が
設けられている。
その他にも野菜を運ぶアルミ製のリア
カーや農機具などが置いてあり、土間か
ら部屋の中を覗けば、ウネウネと曲がり、
手斧の跡が随所に残る立派な梁や高い
天井、そして、和紙と竹細工で作られた
丸いフォルムのペンダントライトが
見える。
お洒落でノスタルジックな古民家。
藤井さんの自宅は、そんな感じだった。
レイは持っていたカゴを足元へ置くと、
土間から家の奥へ向かって声をかけた。
「藤井さん、キッチン借りるよ!」
その声に耳を澄ますと、すぐに廊下を
歩く足音が聞こえてきた。
「ああ、お帰りなさい。どうぞ遠慮なく
使ってください。何もお構いできませんが、
ちょうど芋が焼けたのでそこに置いておき
ました。安穏芋の焼き芋です。旨いですよ」
土間の隅にある、二人掛けのテーブルを
指差し、藤井さんが目を細める。アルミ
ホイルで包まれたそれに触れてみれば、
まだ温かく煤のようなものがついて
いた。
「焼き芋かぁ、ありがとう。さっそく
いただくよ。僕もこれ、お土産に」
そう言って軍手を外すと、リュックの中
から細い紙袋を取り出す。それを藤井さん
に渡すと、レイは腰に手をあてて言った。
「それ、好きだよね?」
「獺祭ですか。もちろん、大好きですよ。
さっそく、今日の晩酌にいただきます」
袋の中を覗いた藤井さんは、日本酒の
瓶を取り出し、満面に喜色を湛える。
二人の親し気なやり取りを見ながら傍
に突っ立っていると、藤井さんは紫月に
声をかけてくれた。
「私は作業場の方にいますので、ここは
ゆっくり使ってください。冷えるような
ら、居間を使ってもらって構いませんよ。
うちの野菜をじっくり堪能していってく
ださい」
「ありがとうございます。お言葉に甘え
させていただきますね」
そう答えると、彼は紙袋を抱え、家の奥
へと戻って行った。
「やっぱり、いつもやってるだけあって、
手早いわね」
刃の部分が四角い菜切り包丁で、サクサク
と大根や人参を太めの千切りにしていくレイ
を隣で見守りながら、紫月は感心して言った。



