「いや。妬いてくれたのかな?と思っ
て。もしそうなら、すごく嬉しいけど」
くつくつ、と、可笑しそうに肩を揺す
りながら、レイが紫月の背後から離れる。
そうして腰を屈め、黄色のカゴから
自分の分の軍手を取り出した。
「別にそういう意味じゃ……」
と、言いかけて紫月は言葉を止めた。
相手が妹だと聞いた瞬間、“良かった”
と思った自分がいるのではないか?
-----嫉妬じゃない、とは言えなかった。
紫月は軍手をしてこちらを振り返った
レイに、どうにも形容しがたい笑みを
向けたのだった。
それからはレイの細やかな指導の下、
紫月は豊かな大地に育まれた新鮮な野菜
を、沢山収穫した。
「人参は少し根元を掘って、根が4~
5センチくらいに成長したものを収穫
するんだ。茎の下の方を持って、真っ直
ぐ引き抜く。やってごらん。簡単だよ」
レイが先にやってお手本を見せてくれ
る。紫月は彼に習って同じように人参の
根元を持ち、ゆっくりと引き抜いた。
すぽっ、と人参が抜ける感触と共に、
瑞々しい橙の野菜が目の前に現れる。
「採れた!ねぇ、見て。立派な人参よ」
紫月はところどころ泥のついたそれを
レイに見せ、子供のようにはしゃいだ。
「うん。よく育ってるね。その調子で、
あと10本くらい抜こうか」
紫月の笑顔に満足そうに頷きながら、
レイは軍手についた泥を払う。
「任せて。あと10本ね!」
紫月はそう答えると、採れた人参を
足元へ置き、次々と引き抜いた。
そうして、同じ要領で今度は大根を
収穫する。収穫した人参をカゴに入れ、
大根畑へ行くと、レイは畝の脇にしゃ
がみ、紫月を見上げて言った。
「大根は葉っぱが横に広がってるのが、
十分に成長したっていう合図なんだ。
ほら、これ。広がってるだろう?根っこ
を持って引っ張ってごらん」
「ええ。根っこね」
彼の隣に立っていた紫月は、腰を屈め
ゆっくりと大根の根元に両手を添える。
きっと人参の時よりも、力が要るに
違いない。そう思った紫月は、それを
思いきり引き抜いた。すると、思って
いたよりも簡単に、すぽっ、と大根が
抜ける。白く立派な大根が土の中から
姿を現した瞬間、紫月は身体のバラン
スを崩し、後ろによろけてしまった。
「ひゃ!!」
大根を手に持ったまま、紫月は後ろに
ひっくり返りそうになる。その身体を、
ガシリと受け止めてくれる腕があった。
-----レイだ。
彼は見事なタイミングで紫月を抱きと
め、そうして紫月はその弾みで誤って
レイの足を踏んでしまった。
「レイ!足っ!!」
ごめんなさい、と、言おうとして腕の中
から彼を見上げる。けれど彼の顔を見る
ことは出来ない。紫月は大根を胸に抱えた
まま、その腕に抱きすくめられてしまった。
「……レイ?あの……」
どうしたのだろう?突然。
紫月はわけがわからないまま、レイの腕
の中でじっと息を潜めた。やがて彼の声が
聞こえてくる。その声は、少し掠れていた。
て。もしそうなら、すごく嬉しいけど」
くつくつ、と、可笑しそうに肩を揺す
りながら、レイが紫月の背後から離れる。
そうして腰を屈め、黄色のカゴから
自分の分の軍手を取り出した。
「別にそういう意味じゃ……」
と、言いかけて紫月は言葉を止めた。
相手が妹だと聞いた瞬間、“良かった”
と思った自分がいるのではないか?
-----嫉妬じゃない、とは言えなかった。
紫月は軍手をしてこちらを振り返った
レイに、どうにも形容しがたい笑みを
向けたのだった。
それからはレイの細やかな指導の下、
紫月は豊かな大地に育まれた新鮮な野菜
を、沢山収穫した。
「人参は少し根元を掘って、根が4~
5センチくらいに成長したものを収穫
するんだ。茎の下の方を持って、真っ直
ぐ引き抜く。やってごらん。簡単だよ」
レイが先にやってお手本を見せてくれ
る。紫月は彼に習って同じように人参の
根元を持ち、ゆっくりと引き抜いた。
すぽっ、と人参が抜ける感触と共に、
瑞々しい橙の野菜が目の前に現れる。
「採れた!ねぇ、見て。立派な人参よ」
紫月はところどころ泥のついたそれを
レイに見せ、子供のようにはしゃいだ。
「うん。よく育ってるね。その調子で、
あと10本くらい抜こうか」
紫月の笑顔に満足そうに頷きながら、
レイは軍手についた泥を払う。
「任せて。あと10本ね!」
紫月はそう答えると、採れた人参を
足元へ置き、次々と引き抜いた。
そうして、同じ要領で今度は大根を
収穫する。収穫した人参をカゴに入れ、
大根畑へ行くと、レイは畝の脇にしゃ
がみ、紫月を見上げて言った。
「大根は葉っぱが横に広がってるのが、
十分に成長したっていう合図なんだ。
ほら、これ。広がってるだろう?根っこ
を持って引っ張ってごらん」
「ええ。根っこね」
彼の隣に立っていた紫月は、腰を屈め
ゆっくりと大根の根元に両手を添える。
きっと人参の時よりも、力が要るに
違いない。そう思った紫月は、それを
思いきり引き抜いた。すると、思って
いたよりも簡単に、すぽっ、と大根が
抜ける。白く立派な大根が土の中から
姿を現した瞬間、紫月は身体のバラン
スを崩し、後ろによろけてしまった。
「ひゃ!!」
大根を手に持ったまま、紫月は後ろに
ひっくり返りそうになる。その身体を、
ガシリと受け止めてくれる腕があった。
-----レイだ。
彼は見事なタイミングで紫月を抱きと
め、そうして紫月はその弾みで誤って
レイの足を踏んでしまった。
「レイ!足っ!!」
ごめんなさい、と、言おうとして腕の中
から彼を見上げる。けれど彼の顔を見る
ことは出来ない。紫月は大根を胸に抱えた
まま、その腕に抱きすくめられてしまった。
「……レイ?あの……」
どうしたのだろう?突然。
紫月はわけがわからないまま、レイの腕
の中でじっと息を潜めた。やがて彼の声が
聞こえてくる。その声は、少し掠れていた。



