でも、どこへ行けばいいかは分からない。でも、とりあえず病院の中にいるしかないだろう。幸い彼しか私を認識している様子はなかった。

 死のうとしたことを後悔させるとしか思えない巡りあわせだ。

 最後にファンとなんて会いたくなかった。

 会いたくないから、駅のホームを死に場所として選ばなかったのに。

 そっと踵を返そうとすると、ぎゅっと腕を掴まれた。

「ど、どこに行くんですか」

 振り返れば、さっき私のファンを名乗った男が、血相を変え私の腕をつかんでいる。

「どこって……どこでも。病室とか?」
「なら、お、俺の家に来てください。俺しか貴女のことが見えないのなら、い、一緒にいましょう! あかりちゃんが生き返るまで!」

 彼はまるで、プロポーズでもするように私を見つめてくる。