一時間寝てかなり回復したから、次の数学は受けた。



「朝比奈ーっ、これ、頼んだぞ」


数学の田中先生――生徒の間では怖すぎる見た目から“鬼先”と呼ばれている。鬼みたいな先生ってことらしい――は、私が断れないことを知っていて、授業後には毎回プリントを運ぶのを頼んでくる。



今日のプリントはいつもより多いな……前が見えづらい。



「きゃあ……!」


“何か”に足が引っかかって転んでしまった。



あー、プリントが散らばってちゃった……。



「あーら、ごめんねぇ、気づかなくて足出しちゃってたぁ」


声の主は勿論 野崎。それにわざと引っかけていたことだってわかる。




「プリントが散らばっちゃってるじゃない。次の授業二分後だけど大丈夫かしら?」



そう言って去った。……次の授業は諦めるしかないか。





「――手伝うよ」