「亜紀、ごめん、連絡出来なくて」

「はじめから連絡するつもりはなかったって事ですか」

「それは誤解だ」

「でも、理樹さんには婚約者がいらっしゃいますよね」

「俺もニューヨークから戻って知った」

「えっ?」

「でも、会社の存続のために、俺は婚約者と結婚する、亜紀との約束を守れなくてすまない」

そうだったんだ、私、騙されたわけじゃないんだ。

ちょっと口角が緩んだ。

そんな私の表情を見て、理樹さんは副社長との事を聞いてきた。

「健の秘書ってどう言う事?それに恋人だなんて、心臓が止まるかと思ったよ」

「副社長の恋人ではありません、それと秘書のことは、このビルに足を運んだ時、偶然副社長に入り口で声をかけられて、僕の秘書になって欲しいって頼まれたんです」

「そうだったのか」

「でも、ニューヨークで何かあったって見抜かれています」

「あいつは感が鋭いからな、もう、戻った方がいいな、あまり長くなるとあらぬ噂を立てられるから」