刈谷は一晩警察にお世話になり、厳重注意を受けて、病院へ戻れたのは夕方だった。

その間、亜紀は病室に戻れたが、意識は回復しなかった。

俺は亜紀のベッドの傍で、亜紀の手を握っていた。

「亜紀、早く目を覚ませ、退院したら一緒にニューヨークへ行くんだろ、その前に結婚しような、夫婦としてニューヨークへ行くんだもんな」

俺は亜紀の側を片時も離れず寄り添っていた。

刈谷は既に俺と亜紀の間に入り込める余地がないことを悟った。

病室のドアに背を向けてその場を立ち去った。

「亜紀、覚えているか、初めて会ったニューヨークの街並みはすごく綺麗で、忘れられない景色だったよな」

「亜紀、俺を置いて行くなよ、俺、亜紀にまで置いて行かれたらどうすればいいんだ」

俺の願いは聞き入れられなかったように、亜紀はずっと眠ったままだった。


真央、亜紀を連れて行かないでくれ、俺、また一人になっちまうよ。

俺は亜紀が目を覚ますまでずっと亜紀の側を離れなかった。