初日なんて、起こしたら蹴られたし。

間違いなく女の子と朝を過ごすことも少なくないだろうシイに「どうすんの?」って聞いたら、案の定それが原因でフラれたことが何回かあったらしい。



……だろうな。

いくら夜に幸せな思いさせてもらったって、朝冷たい男は嫌われると思う。俺も寝起き良い方じゃねえけど、機嫌はそこまで悪くねえもん。



「シイちゃん、目ぇさめた?」



「さめた。……だっるいんだけどまじで」



「……なんだろうな〜。

ここ数日で、知りたくなかったシイの素をこれでもかってぐらい見た気がして俺嫌なんだけど」



「俺だって好きこのんで見せてないから」



シャワー浴びてくる、と着替えを手に洗面所に入っていったシイ。

それを見送って、綺麗に入れてあったカッターシャツに袖を通す。昨日までは私服だったけど、最後は制服だ。




「あ、」



そういや、はなびと先輩の話はどうなったんだろうか。

スマホを見ても芹から連絡はねえし、まだ6時だからいずれは来るんだろうけど。あの人の展開が読めないだけに、少々不安ではある。



うまくいってるといいけど、な。

もしアウトの声が出れば、はなびとはやっぱり距離ができたままになる。だからってあきらめるような俺らじゃねえけど。



そういえばあの日俺が車を降りた後。

あの人とふたりだけになった染は、一体どんな話をしたのか。



「……、」



はなびに好きな人ができて。

それが先輩だって知ったとき、誰も止めなかったのは。



はなびの気持ちを優先したってことも、もちろんだけど。

あの人は誰かに劣ることもないような、人だったから。……俺ら以上に、あの人はハイスペックで。文句のつけようなんて、なかったから。