『おはよぉ、おにーちゃん』



「おはようすみれ……

休みの日までちゃんと早起きして偉いな」



『おにいちゃん、おねむ……?』



電話の向こうで首をかしげる妹を想像して、ふっと口元が緩んだ。うん、今日もすみれは天使だ。

朝すみれに直接起こしてはもらえないけど、モーニングコールが掛かってくる。本当は掛かってくる前から起きてるんだけど、今日でそれも3回目。



本日、日曜日。

ようやく修学旅行は最終日で、今日は朝食をとったあと、集合時間まではかなり長い自由時間だ。



「ん、まだ眠いけど起きるよ。

……お土産買って、夕方には帰るからな」



言いながら、足を伸ばした先でまだ寝てるシイの背中を軽く蹴る。

寝返りを打ったシイがかなり不機嫌に俺を睨んだけど、起こしてやるだけマシだろ。




『おにいちゃん、』



「ん?」



『はやくかえってきてね……?』



ああ、やばい。天使がいる。

電話越しじゃなかったら絶対抱きしめてる。なんなら額にキスしてるレベル。かわいすぎて、お兄ちゃんはすみれが誘拐されないか心配だ。



「はやく帰る。だからお利口に待っててな?」



『はぁい』



名残惜しくなりながらも、大好きだよとささやいて電話を終わらせた。

洗面所に向かう途中、シイの「あー、だっる」というぼやきが聞こえてきたけど。数日一緒にいてわかったのは、シイの寝起きが最悪だってことだ。