「あー……つっかれた……」



「椿そのまま流し目でこっち見てよ。

写真に撮ったら女子たちが発狂しそう。売りつける」



「絶対やだ」



東京から飛行機で大阪に行くとなれば、そう時間はかからない。

午前のうちに到着してそのまま歴史学習だなんて銘打った観光に行ったのはいいものの、ようやくホテルに着いたのは午後5時前。



早朝から動いてるせいで、初日なのに疲労がピークだ。

ベッドになだれこんだままふあっと欠伸を漏らして、夕飯よりも寝たいな、と思うけれど。



『おにーちゃーん』



電話の向こうからかわいい声が聞こえてくると、思わず気がぬける。

一応修学旅行中は緊急時の連絡以外電話禁止、らしいけど。俺が教師との約束を守った試しはない。というか疲労で癒しが欲しいのは俺にとって緊急事態だから。




「すみれー……」



朝、頰にいってらっしゃいのキスをしてくれた妹が恋しくてたまらない。

できることなら一刻でも早くすみれに会いたい。会って抱きしめたい。



「うぇ、ちょっとシイ、重い」



「俺のことは気にしなくていいから電話してなよ」



「ベッド結構広いんだからそっち使えよ……

まじで体重かけんのやめて、俺いまお疲れだから」



ベッドにべたっと突っ伏している俺の上にわざと乗ってくるシイ。

なんかこの間、ソファに座ってたら芹も後ろから俺の肩に乗りかかるようにして体重をかけてきたけど。俺下敷きにされすぎじゃねえ?



シイは十分細いけど、これでも男子高校生。

重いのは重いんだよと顔をしかめていたら、シイのスマホが鳴った。