「この質問の意味と意図が分かるだなんて…。ハッ、もしかしてほのかも同じ沼の狢(腐女子)…?」

 「いえ、期待させたところ悪いですが、私はただ雑食なだけのオタクです。というか、ほのか“も”っていうことはやはり…」

 「うん、そうだよ。私は腐った沼にハマった人。一応隠れ」
 
 実にあっけらかんと答える桜は、たった今結構なカムアウトをした人間には思えない。

 私はオタクって言うのに結構勇気いったのに…すごいなぁ…

 そう斜め上な感心をしていると、「これ渡しとく」と、何やら走り書きのような物をもらった。

 「って、これ…っ!」

 「あぁ、私の電話番号と一応メアド。電話でL○NEのお友達登録出来なかったら、そのメアドに連絡ちょうだい。QRコード貼付して送るからさ」

 「え、いや、あの…」

 「登録し終わったらそのメールは削除しておいてね。しないと思うけど、学校とかネット上とかにバラ撒かれたら嫌だし」

 「いや、そんなことはしませんよ…!」

 その言葉にギョッとして、慌てて口を出す。
 
 むしろ頼まれたってしたくない。そんなことしたら、普通に死ぬ。社会的にタヒんでしまう。絶対ネットが炎上して言葉のリンチにあってしまうわ。罵詈雑言の嵐だって。そうなってしまえば不登校一直線ルート不可避だよ。絶対精神病むよ。

 …ヤバい、そんな未来恐怖すぎるんだけど。流石のドMだって、これには合いたくないに違いない。


 「まぁ、普通はしないよねぇ…」

 どこか遠い目をして、しみじみと桜はそう言う。
 その表情には哀愁が漂っている気がした。
 
 「………」

 「え、あ、私は違うよ。ただ親戚でいたんだよね、似たような目にあったというか、してしまったというか、そんな人が」

 「……………」

 「それを見て思ったよね、“あんな目には絶対合いたくない”って。あがったのは一瞬だったらしいんだけど、それをスクショしてアップしたアカウントがあったみたいで。まぁ捨て垢だったけど。で、そこから広がって、一時は知らない人からのL○NE通知が100件を超えてたそうだよ」

 「……それやばすぎでは…?」

 え、怖くない??
 知らない人間からL○NEくるとか怖すぎるだけど。
 もし私だったら真面目に人間不信になりそう。あ、これはなんか違うか。
 
 「うん、マジでヤバいやつだったんだよ。その人最終的にスマホと電話番号変えてたもん」

 「じゃあ、今までのデータとか…」

 「あぁ、電話番号で登録してたやつとかは真っ白。引き継ぎコードとってたのとか、メアドで登録してたのは何とかなったのもあったらしいけど」

 「ひえぇ…。私はゲームデータと小説アプリのデータ消えたら軽く死ねるわ…」

 「それな。私もゲームデータと特にp○x○vのデータ消えたら死ねる、ていうか死ぬ」

 「それは分かり味が深すぎる」

 「てか、p○x○vといえば△□絵師様の例のイラスト控えめに言ってめっちゃ神」

 「マジでそれな!あの質感とかもう色々とヤバい。貢ぎたい」

 後半は普通にオタクの会話になった。
 いつの間にか私の敬語は取れていて、それどころかめっちゃ意気投合して互いのSNSを教えてた。


 それが、私と桜が親友になったキッカケである。

 うん、我ながら意味が分からないw