ジェシカに釘付けになっていた男たちが、〝おや?〟と首を傾げ出したのは、そのすぐ後のことだった。この華麗な乙女は一体何を選ぶのかと、もはや意味のわからない期待を膨らませていた彼らにとって、ジェシカの行動はあまりにも意外だった。

「これ美味しそう!!」
「うわぁ、なんだろうこれ?」
「あっ、お肉だわ!!」
「これは2個もらっておこう」

みるみるうちに盛り上がっていくジェシカの皿に、男どもの疑問がむくむくと膨らんでいく。
が、ジェシカがそれに気付くはずも気に留めるはずもない。目の前の料理に心を奪われているのだから。

「うん。こんなものかしら? とりあえず」

〝とりあえず?〟と呟いたのは誰だろうか?
声にこそしないものの、内心そう思った男は数人いたかもしれない。もちろん、ジェシカは知らないが。

そのまま少しだけ脇のスペースに移動するジェシカ。首をひねりながらも、ジェシカに群がっていた男の8割ちかくが、ぞろぞろとついていく。

とりあえず、食事を始めた以上、この華麗な乙女はしばらく踊らないだろう。とはいえ、目を離した隙に抜け駆けする輩もいるかもしれない。と、離れることも誘うこともできない面々は、再び足元で軽い牽制を繰り広げていた。

「美味しい!!」

その熟れた苺のような赤い唇に吸い込まれていったのは、一体どの料理だったのか。咀嚼するジェシカの口元を堪能するように凝視する面々は、いろんな意味でゴクリと喉を鳴らした。

「まあ、これも美味しい」
「こんなの、はじめて食べたわ」
「ああ、作り方を教えてもらえないかしら?」

苺から時折発せられる小鳥のさえずりが、どこか妙だと感じた1割の男性は、また後でチャンスを狙いに行けばいいかと、そっとその場を離れた。もちろん、ジェシカは気付きもしない。