ジェシカが題名を告げると、あれほど賑やかだった子ども達は一斉に静かになった。それはひとえに、この子達が読み聞かせの楽しさを知っていることが大きい。加えて、ジェシカが読み聞かせに慣れているからだ。
彼女の読み聞かせは、なかなか聞きごたえがある。思いのこもった朗読に、子ども達はほかの物音など全く気が付かないほど集中した。部屋の後方に見える廊下を、複数の騎士達が行き来していても、全く気が付いていない。
「おしまい。どうだったかしら?」
「おもしろかった!!」
「ちょっと怖かった」
それまでの静かさが嘘のように、子ども達が一気に騒ぎ出した。
「あっ、騎士様だ!!」
そのうち一人が、やっと外の様子に気が付いて声を上げた。彼の指さす方には、倉庫の屋根やブランコを修理する騎士達がいた。さすがに今日は鎧を被っているわけでも、帯剣しているわけでもない。それでも、騎士は男の子達にしてみれば憧れの存在だ。
おまけにここでは若い男性に接する機会がほとんどない。物珍しさに、子ども達は相当興奮しているようだ。女の子達ですら、普段は目にすることのない騎士の姿に浮ついている。
騎士達は慣れたもので、手際よく作業を進めている。
「騎士様だぁ」
その姿をうっとりと見つめる子ども達の姿が可愛くて、ジェシカは微笑ましい気持ちで見つめた。
弟のオリヴァーも、この子達と同じぐらいの頃には騎士に憧れていた。騎士が主役の絵本を毎日のように〝読んで〟とせがんできたものだ。
それが今となってはどうだと、なんだか寂しく思ってしまうこともある。けれど、やっぱりジェシカにとってオリヴァーは、あの頃も今も変わらず可愛い弟だ。子ども達の姿に、つい懐かしさに浸っていた。
それからしばらく遊びに付き合っていると、おやつの時間になった
「みんなの憧れの騎士様達も、一緒に休憩されることになりました。せっかくの機会です。いろいろお話してみるといいわ」
子ども達が嬉しそうな声を上げる。これも仕事の一環なのだろうかと思ったけれど、そうではないらしい。
どこの国でも子ども達にとって騎士は憧れの存在だ。子ども達の熱い視線を感じて、それならと騎士の方から申し出てくれたようだ。作業はまだ残っており、外で一緒に遊ぶことはできない代わりに一緒に過ごすぐらいと。ありがたい心遣いだ。
ジェシカも準備を手伝っていた。どうやら焼いてきたクッキーは、騎士達に出す分もありそうだ。冷たいレモン水に、クッキー。それからもともと用意されていたパウンドケーキ。その横には、リンゴのジャムも添えられている。レモンもリンゴも、敷地内に植えられた木から収穫したものだ。特にジャムは孤児院のバザーでも売り出しており、ジェシカもお気に入りの一品だ。
彼女の読み聞かせは、なかなか聞きごたえがある。思いのこもった朗読に、子ども達はほかの物音など全く気が付かないほど集中した。部屋の後方に見える廊下を、複数の騎士達が行き来していても、全く気が付いていない。
「おしまい。どうだったかしら?」
「おもしろかった!!」
「ちょっと怖かった」
それまでの静かさが嘘のように、子ども達が一気に騒ぎ出した。
「あっ、騎士様だ!!」
そのうち一人が、やっと外の様子に気が付いて声を上げた。彼の指さす方には、倉庫の屋根やブランコを修理する騎士達がいた。さすがに今日は鎧を被っているわけでも、帯剣しているわけでもない。それでも、騎士は男の子達にしてみれば憧れの存在だ。
おまけにここでは若い男性に接する機会がほとんどない。物珍しさに、子ども達は相当興奮しているようだ。女の子達ですら、普段は目にすることのない騎士の姿に浮ついている。
騎士達は慣れたもので、手際よく作業を進めている。
「騎士様だぁ」
その姿をうっとりと見つめる子ども達の姿が可愛くて、ジェシカは微笑ましい気持ちで見つめた。
弟のオリヴァーも、この子達と同じぐらいの頃には騎士に憧れていた。騎士が主役の絵本を毎日のように〝読んで〟とせがんできたものだ。
それが今となってはどうだと、なんだか寂しく思ってしまうこともある。けれど、やっぱりジェシカにとってオリヴァーは、あの頃も今も変わらず可愛い弟だ。子ども達の姿に、つい懐かしさに浸っていた。
それからしばらく遊びに付き合っていると、おやつの時間になった
「みんなの憧れの騎士様達も、一緒に休憩されることになりました。せっかくの機会です。いろいろお話してみるといいわ」
子ども達が嬉しそうな声を上げる。これも仕事の一環なのだろうかと思ったけれど、そうではないらしい。
どこの国でも子ども達にとって騎士は憧れの存在だ。子ども達の熱い視線を感じて、それならと騎士の方から申し出てくれたようだ。作業はまだ残っており、外で一緒に遊ぶことはできない代わりに一緒に過ごすぐらいと。ありがたい心遣いだ。
ジェシカも準備を手伝っていた。どうやら焼いてきたクッキーは、騎士達に出す分もありそうだ。冷たいレモン水に、クッキー。それからもともと用意されていたパウンドケーキ。その横には、リンゴのジャムも添えられている。レモンもリンゴも、敷地内に植えられた木から収穫したものだ。特にジャムは孤児院のバザーでも売り出しており、ジェシカもお気に入りの一品だ。


