〝すわ、次は自分が!!〟と、再び群がろうとする男性達をヒラリとかわした彼女が向かった先は、料理が並べられた壁際のスペース。頭上で煌めくシャンデリアも、女性たちの首元で輝く宝石もくすんでしまいそうなほど美しい瞳を、かつてないほどきらきらと輝かせるジェシカ。

「すごい……」

思わず漏れたジェシカの呟きに〝声すら華憐だ〟〝小鳥のさえずりか?〟と、嘆息する男性達。
その存在に、彼女は気が付いているのだろうか? いや、気付いているはずがない。今目の前には、見たこともない豪華な料理が、これでもかと並べられているのだから。おまけに、デザートまで!!

『いいですか、父上。姉さんから目を離さないでください。絶対ですよ!!』

と、口酸っぱくオリヴァーに言い聞かされていたはずの父マーカスの姿は、この時点ですでにジェシカの横にない。近くにすらない。
踊り終えた直後に懐かしい面々に声をかけられ、アルコールを手渡され、すっかり同窓会状態になって姿をくらましていた。

つまり、ジェシカを見守り、その奇行を止める人物は誰一人としていない。

「これ、全部タダなのね……」

うっとりと呟くジェシカの言葉が少々場にそぐわないことなど、彼女に心奪われた男どもに正確に伝わるはずもない。料理に向けるジェシカの視線に負けないほどうっとりした視線を彼女に向け、その足元では牽制し合う。

皿を手に料理を吟味するジェシカ。男どもには、そんな些細な動作ですら華麗に見えてしまうから不思議だ。