「じゃあ、同志の団長さんも。どうぞ」
「同志?」

くいっと片眉を上げたオリヴァー。
なぜ睨まれなきゃならないのか? 理由はいまいちわからないものの、ジェシカは途端に逃げ腰になった。もはや条件反射だ。

「姉さん」
「は、はい……」
「このお方が、誰だかわかってるんですか?」

〝知らわないわけがないですよね?〟と圧をかけながら詰め寄るオリヴァーに、若干腰が引けてしまう。

「だ、団長様でしょ?」
「ええそうです。フェルナン・タウンゼンド騎士団長様。先の戦で数々の功績を上げられ、〝戦の鬼〟と他国まで知られるお方なんですよ。そんな方を同志とか……なにわけのわからないことを……失礼がすぎます!!」

(こ、怖っ……この子、14歳なのよね? どうしてこんな迫力があるのよ……って、ん? 戦の鬼?)

「戦の、鬼?」

そんなの聞いたこともないと首をかしげるジェシカに、オリヴァーが盛大にため息をついた。

「オリヴァー君」

見かねたフェルナンが、二人の間に入った。

「そう姉上を責めてやるな。この国もここ数年は平和が保たれている。私を知らなくても、なんら不思議ではない」
「ですが……本当に、失礼な姉ですみません」
「いや。楽しいお嬢さんじゃないか」
「物は言いよう、ですね」

オリヴァーの返しにフェルナンが笑ったのを見て、とりあえず大丈夫そうだと、ジェシカは次のスイーツを手にしていた。時折、その味や見た目の感想をロジアンとかわしながら、至福の時を堪能している。

「ところで、オリヴァー君。君はジェシカ嬢の弟なんだよな?」
「はい、そうです。なぜ僕が姉の付き添いをしてるかってことですか?」

フェルナンの聞きたいことを悟ったオリヴァーは、姉の実態を知られているのなら隠すまでもないと、事の次第を話して聞かせた。