貧乏伯爵令嬢の世にも素敵な!?婚活事情

「あなた、お名前は?」
「ジェシカです。ジェシカ・ミッドロージアン。ハンカチ、あなたのものですよね?」

途中でフェルナンが拾い上げたハンカチを、手渡した。

「ええ、そうです。本当にありがとう。亡くなった夫がくれた宝物でしたの。助かったわ。でも、女性がドレス姿で木に登るだなんて、危ないわ」
「私、木登りは慣れてるんです。ちょっと驚いて、手が滑っちゃったんですけど……」

ちらりとフェルナンに顔を向ければ、彼はなんとも言えない難しい顔をしていた。
けれど、その肩が揺れているところを見れば、怒っているわけではないのだろう。おそらく、笑うのをこらえているのだ。

「団長さんが受け止めてくださいました」
「そうみたいね。よかったわ」

彼女が呼んできた騎士は、状況を見て持ち場にもどっていった。


どれほど時間が経ってしまっただろうか……。
そっともどって、しれっとさっきの場所に立っていれば、オリヴァーに気付かれずにすむかと、ジェシカは考える。

「なにか、お礼を……」
「いいですって、そんなこと。私が勝手にしたんですから」
「でも……」
「団長さんも、もう大丈夫ですから。ありがとうございました。先に中へもどってください」

こんな大柄で目立つ人と一緒にいたら、悪目立ちしてオリヴァーにいろいろとバレてしまう。お願いだからもどって欲しいと思いながら視線をさまよわせるジェシカ。
その視線の先に、自分を探すように動いているオリヴァーの姿を見付けてしまった。
「まずい……」
「どうかしたのか?」

思わずもらした一言に、フェルナンが反応する。

こうなったら、彼を盾にして……。
いや、無理か。でも、そのままもどっても……。
とりあえず、外にいたことさえバレなければ……お手洗いとかなんとかごまかせるかもしれない。