貧乏伯爵令嬢の世にも素敵な!?婚活事情

「なにをしている」

ご婦人の到着は、自分が地面に降り立った後だろうと思っていた。
それがまだ木につかまっている状態で、突然下から声をかけられてジェシカは思わず手を滑らせてしまった。

「きゃあ」

(よし、ハンカチも今の振動で落ちてくるわ)
思わず声を上げたものの、木登りも木からの落下もそれなりの経験のあるジェシカは、目的だったハンカチを見届けるぐらいの余裕も持っていた。
あとはいかに痛みの少ない落ち方をするか。と、瞬時に頭を働かす。
(体を丸めて、頭を守って……)
地面!! と覚悟を決めて目を閉じ、歯を食いしばったジェシカが落下した先は……

「ん? 痛くないわ」

ちょっとだけ衝撃はあったものの、地面に打ち付けられたような痛みは全くない。

「それはよかった」
「え?」

思いの外近くから聞こえてきた声に驚いて目を開ければ、そこは地面でもはたまた天国でもなく、大柄な男性の腕の中だった。
(おかしい……私、木から落ちたはずよ。だとすれば、たどり着くのは地面のはずで……)

「まあ!! 大丈夫でしたの?」

状況が掴めない中、また別の人の声が聞こえてくる。こちらは二階にいたご婦人のようだと、すぐに思い至った。

「お二人とも、怪我はありませんか?」
「団長でしたか。大丈夫ですか?」

心配するご婦人の声と共に、また別の声が聞こえた。

「ああ」
「団長?」

再び自分のことを腕に抱えている男性に目を向けた。

「いかにも。二度目だな、ジェシカ嬢」

(……このやりとりは、以前にもあった気が……)

「あっ! 団長さん!! 同志の!!」
「同志?」

一体何のことかと首をひねるフェルナンに、〝そうだ、そうだ〟と一人納得したジェシカは、〝降りますね。すみません〟と呑気に笑顔で言いながら、身をよじりだした。

「ちょっと待て。足が汚れてしまう」
「今さら!?」

〝あは〟と笑いながら、そのまま地に足を下ろそうとするジェシカを抑えたフェルナンは、ご婦人と一緒に駆け付けた騎士に靴を拾わせ、ベンチに座らせたジェシカに渡した。その横で、ご婦人が話しかけてくる。