ジェシカぐらいの年齢になると、婚約者がいてもなんらおかしくないことだ。
この国では、16歳のデビュタントを迎えると、本格的なお相手探しが始まる。もちろん、幼少期から許嫁がいる者もいるが、あくまでそれは少数派だ。
そして、ジェシカと同じ18歳になる頃には、半数近くの女性が婚約者を決めている。
結婚できるのが18歳から。ジェシカと同年代で、すでに結婚している令嬢もいる。
しかし、デビュタントに出られず、一歩も二歩も遅れをとっているジェシカの婚活事情は、全くの白紙だ。
本来ならば焦るところではあるけれど、いかんせん本人はそれを全く感じていない。むしろ、そのことを弟のオリヴァーの方が心配しているほどだ。
呑気でお人よしの父に任せていれば、何も決まらないだろう。もしくは、とんでもない男を押し付けられてしまうかもしれない。ならば自分が動くしかないと、オリヴァーは姉に対して口うるさくなっていた。
「ジェシカ・ミッドロージアン嬢ですね? はじめまして。私、クラーク・ナフィールドと申します」
「はあ」
腑抜けた返事をする姉ジェシカの横で、オリヴァーはその優秀な頭脳を素早く働かせていた。
ナフィールドといえば子爵家。伯爵よりも下になる。このクラークという人物は、確かナフィールド家の嫡男。
ナフィールド家の領は少々田舎ではあるけれど、その領地では昔から宝石が採掘されていたはず。さらに王都に宝石店をかまえ、ずいぶんと繁盛させている。嫡男であり、経済的に安定しているナフィールド家のクラーク。この男に関しては悪い噂を耳にしたことがない。
「一曲、お付き合いいただけますか?」
丁寧で優しげな雰囲気。これは知り合っておいて悪くないと判断したオリヴァーは、さりげなくジェシカの背を押した。
「え、ええ。もちろん」
あらかじめオリヴァーに言われていた通り、相手に微笑みかけるジェシカ。途端にクラークの頬に朱が差したのを、オリヴァーは見逃さなかった。大丈夫そうな相手だ。
この国では、16歳のデビュタントを迎えると、本格的なお相手探しが始まる。もちろん、幼少期から許嫁がいる者もいるが、あくまでそれは少数派だ。
そして、ジェシカと同じ18歳になる頃には、半数近くの女性が婚約者を決めている。
結婚できるのが18歳から。ジェシカと同年代で、すでに結婚している令嬢もいる。
しかし、デビュタントに出られず、一歩も二歩も遅れをとっているジェシカの婚活事情は、全くの白紙だ。
本来ならば焦るところではあるけれど、いかんせん本人はそれを全く感じていない。むしろ、そのことを弟のオリヴァーの方が心配しているほどだ。
呑気でお人よしの父に任せていれば、何も決まらないだろう。もしくは、とんでもない男を押し付けられてしまうかもしれない。ならば自分が動くしかないと、オリヴァーは姉に対して口うるさくなっていた。
「ジェシカ・ミッドロージアン嬢ですね? はじめまして。私、クラーク・ナフィールドと申します」
「はあ」
腑抜けた返事をする姉ジェシカの横で、オリヴァーはその優秀な頭脳を素早く働かせていた。
ナフィールドといえば子爵家。伯爵よりも下になる。このクラークという人物は、確かナフィールド家の嫡男。
ナフィールド家の領は少々田舎ではあるけれど、その領地では昔から宝石が採掘されていたはず。さらに王都に宝石店をかまえ、ずいぶんと繁盛させている。嫡男であり、経済的に安定しているナフィールド家のクラーク。この男に関しては悪い噂を耳にしたことがない。
「一曲、お付き合いいただけますか?」
丁寧で優しげな雰囲気。これは知り合っておいて悪くないと判断したオリヴァーは、さりげなくジェシカの背を押した。
「え、ええ。もちろん」
あらかじめオリヴァーに言われていた通り、相手に微笑みかけるジェシカ。途端にクラークの頬に朱が差したのを、オリヴァーは見逃さなかった。大丈夫そうな相手だ。


