(仮)愛人契約はじめました

「だって、男性を落とすときは、胃袋をつかむものだって雑誌に書いてあったわっ。
 お姉様の料理なら、いくらでも道馬さんの心をつかめるわよっ」

「デパ地下で買ってきてつかみなさいよ。
 ……でもまあ、あのお掃除の腕は捨てがたいわね。

 私が男だったら、あんたより唯由と結婚するわ」
と虹子は深く頷く。

 掃除くらいメイドにやらせればいいようなものだが、唯由が磨くと魔法がかかったように屋敷の中が美しくなるのだ。

 生まれ育ったこの屋敷を大事に思う心が唯由に面倒臭い作業も手を抜くことなく丁寧にやらせているからかもしれないが。

「もうなんでもいいから、見合いでもして結婚しなさいよ、めんどくさいこと言ってないで」

 いい話が来てたでしょ、と言う母親の言葉を最後まで聞かずに、月子は屋敷を飛び出していた。