(仮)愛人契約はじめました

「いえ、雪村さんが温泉宿に行きたいみたいだったので、お礼にどうかなと思いまして。
 うちのおばさんの宿なんですよ」

「あら、そうなの。
 いいわねえ」

 嫌味な感じに美菜が言ってきたので、唯由は、

 ……大野さんも温泉宿に行きたかったのだろうか? と思った。

「あの、大野さんも一緒に行かれますか?」
と誘ってみる。

「いや、なんで私があんたたちカップルについてかなきゃいけないのよっ。
 フラれたばっかりなのにっ」

「えっ? 大野さんでもフラれることなんてあるんですかっ?」

「……他の子だったら、なにご機嫌とろうとしてんのよ、って思うとこだけど。
 あんた、マジね」

「はあ、特に大野さんの機嫌をとらなければならないこともないので」
とうっかり言って、

「とりなさいよっ、先輩のご機嫌はっ。新入社員っ」
と怒られる。