(仮)愛人契約はじめました

「蓮形寺は喜んでませんよ、温泉宿。
 やっぱり、俺が嬉しいだけじゃないですか」

 わちゃわちゃ向こうで話しはじめる。

 なんだろう。
 存在を忘れられている……と思ったとき、社食から道馬が出てきた。

 おや、みんな、彼を目当てに入っていったはずなのに。

 もう出て来るところだったようだ。

 それは正美たち、残念がってるだろうな、と思ったとき、道馬がお疲れ様、と声をかけてきた。

「お疲れ様です」

 唯由が握っているスマホがわあわあ、うるさいのに気づいたらしい道馬がスマホを指差し訊いてくる。

「話さなくていいの?」

「それが私、存在を忘れられてるみたいで」
と唯由は苦笑いして言った。