(仮)愛人契約はじめました

「あ、いえ。
 単に、ここ壁が薄いので、声をひそめただけで……」

 なに勘づかれてるんですかっ、という顔の直哉に睨まれながら唯由がそう言うと、蓮太郎は謝ってくる。

「そうか。
 夜中に鳴らして悪かったな」

「いっ、いえっ。
 すぐにとったので、大丈夫ですっ」

「今日はありがとう」
と言ったあとで、蓮太郎は沈黙した。

 唯由も沈黙していると、だから、そういう、まどろっこしいことしないでください、という目で直哉が見る。

「ところで……さっき、俺はなにかお前におかしなことを言わなかったか?」

 ようやく蓮太郎がそう訊いてきた。

「お前に料理の礼を言ったつもりで、なにか違うことを口走ったような気がしてきたんだ。

 俺はお前になんと言っていた?」

 いや、なんと言ったって……と思う唯由の前で、直哉が小声で囁いてくる。

 自分の後につづけ、というように。