(仮)愛人契約はじめました

 そのとき、スマホが鳴った。

「きっと蓮太郎様ですよ。
 あの方、帰りはあまり迷わないから。

 帰巣本能的ななにかでしょうかね」

 主人を犬かなにかのように言ったあとで、庭に立つ直哉はこちらを見上げ、言ってくる。

「さあ、早く出てください。
 私、一応、中立なことになっておりますので。

 余計なことはおっしゃらないように」

 なにかの犯人に、警察からの電話に早く出ろ、と急かされているような感じだった。

「も、もしもし……」

 つい、声をひそめて出てしまうと、蓮太郎が、

「蓮形寺、どうかしたのか?
 誰かいるのか?
 男か」
と訊いてきた。

 いや、なんで、誰かいるのか、の次が、男か、なんですか。