「あれがひいじいさんの塔だ」

 蓮太郎が指差す。
 敷地内に幾つかある洋館の後ろ、小高い山の中腹に大きな日本家屋があった。

「……立派な日本建築のようですが」

「位置的に、塔っぽいだろ」
と言う蓮太郎に連れられ、真正面にある洋館に入った。

「おや、唯由様。
 いらっしゃいませ」
とイケメン執事、大王直哉(おおきみ なおや)が出迎えてくれる。

「正妻になられるか、愛人になられるか、お決めになられましたか?」

 ……正妻と愛人って、そんなに自由に行き来できるものでしたっけね?

 そう思いなから、唯由は屋敷の中を見回す。

「……素晴らしいお屋敷ですね」

「そうか。
 それはよかっ……

 蓮形寺!?」

 突然、消えた唯由を蓮太郎が呼ぶ。