「まぁ、大人に限らず?浮気とか、あるんですけどねー」

東野さんは大人の表情をした。


「……」



「……私、元彼に浮気されてるから」



「だけど速攻で振ってやったし」と、あっさり話す東野さんは、やっと制服に着替え終わった。





「……じゃあ、体育館閉めるからね」
私は体育館の鍵をチャラッと鳴らして、東野さんに見せる。



「でも透子ちゃんは……」
鞄を持って更衣室から出てきた東野さんは、まだ話を続けているようだった。


「……透子ちゃんって、さっき話した従姉妹なんですけど。透子ちゃんは、浮気されても別れたくないみたい。なんで?って思いません?」





「……」


それはその『透子』さんにも、色々な事情があるからだろう。


そして、そんなデリケートな話を私に聞かせてどうするんだ。


何も言わない私に東野さんは、
「先生には、分かりませんよね?」
と言って笑った。


それから勝ち誇った顔で、
「横手先生って、告白されたことってありますか?」
と、聞いてきた。


嬉々とした表情で、
「私さっき、告白されてー」
と自慢し始めた東野さんに、
「早く帰りなさーい」
と言って、私は体育館の鍵を閉めた。






職員室に戻る。


「遅かったですね」
心配そうな表情で、隣の席に座っている(はら)先生が話しかけてきた。



私は曖昧に返事して、机の上に積んである仕事に取りかかった。