「横手先生ってさ、彼氏とかいますか?」
東野さんは制服のシャツに袖を通しながら、何でもないふうに尋ねてきた。
「さぁ、どうだろうねー?」
私ははぐらかす。
このテの質問は、生徒達によくされる。
教師の恋愛事情を知ったところで、一体どうするんだろうと思ってしまう。
だけど。
知りたいんじゃないのかもしれない、と最近は思うようになった。
質問しているけれど、聞いてほしいのかもしれない。
自分の恋について話したいという、サインなのかも。
「あー、はぐらかしたぁ」
東野さんはケラケラ笑っている。
それから、
「でも、大人の恋愛?って大変そう」
と、続けた。
何を分かったようなことを、と思ったけれど、言わずにいた。
そしてある不安が頭をよぎり、
「どうしたの?何かトラブル?」
と、聞いてみた。