体育館にある、女子更衣室をノックする。
「誰も残ってない?」
声をかけた。
「横手先生、ちょっと待ってー」
更衣室の引き戸がカラリと音を立てて開いた。
「東野さん?まだ着替えてないの?」
更衣室に居たのは、3年生の東野英子だった。
彼女は私の受け持つクラスの生徒でもある。
「ちょっと着替える前に用事があって……」
東野さんはそう言いながら、体操服の上着を勢いよく脱いだ。
「先生は扉の向こうで待ってるから、慌てなくてもいいよ」
そう言って、私は扉を閉めようとした。
「待って!」
東野さんは下着のキャミソール姿を隠すことなく、
「横手先生と話していたいから、行かないで」
と笑った。
仕方なく更衣室の中で待つことにして、扉だけ閉めた。