そのマスコットは、「シー・ファンキーズ」というダンスボーカルグループのグッズの中の1つで。

活動歴16年の「シー・ファンキーズ」の、初期の頃のライブグッズのマスコットだった。


「シー・ファン」と呼ばれる「シー・ファンキーズ」のファンの間でも、幻と言われているマスコットだ。


「シー・ファン」の内のひとりである私も、実物を見たのは初めて。





思わず、「『シー・ファンキーズ』の誰推しですか?」と声をかけてしまった。


日向は(あまね)くん推しだと、小さな声で教えてくれた。


そして私が優大(ゆうだい)推しだと知ると、ニッコリ笑ってくれた。





日向との出会いを思い出しながら鳥南蛮をもぐもぐ食べていると、私のスマートフォンが振動した。




私は確認せず、無視を決めこむ。



「出ないんですか?」


日向が不思議そうな顔をした。



「いいの、出ない。多分、彼氏だから」

なんでもないふうに努めて言った。



「え、出ないと!」


慌てる日向。


スマートフォンの振動がおさまった。



「どうしたんですか?」
心配そうに日向が聞いてきた。