苺にはもうなれない




……私だったら、選ばないバイト先だろうな。



「それで?」
また汚れた自分を見つけてしまった気まずさが襲ってきて、日向の話に集中することにした。




「このナポリタン、マスターが教えてくれたんです。まかないの時に作ってくれて……」



「へぇー!」
と話を聞きつつ、私のフォークはさっきからパスタを巻かずに空中でフラフラしている。


「美味しいよねー!」


ひと口、ふた口くらいは食べた。

確かに美味しいと思った。



でも。




さっきから「食べたい」と思えなくて。




結局、私はせっかく作ってもらったナポリタンをほとんど食べずに食器を下げた。








「透子さん、また大学に来てくださいね」


日向は玄関で靴を履きながら言った。


「またお話しましょうね」




「あ、うんうん!また行くー!」

軽く返事をした。