苺にはもうなれない







それから、何日か経つと。

街行く人達が、こっくりした色合いのお洋服を着るようになってきた。


優大くんから電話があったのは、朝。
仕事に向かう途中だった。


『今度の週末、実家に帰ることになりました』

「そうなんですか!優大くんのご両親によろしくお伝えください」

優大くんは少し黙って、
『……あの、地元の友達と会うんですが』
と、何故か申し訳なさそうな声を出す。





『大事な友達なんです。深雪さんとのこと、話したくて』


「はい。ありがとうございます」



『……地元の、女友達なんです』



……あぁ、それで!!

私は納得がいって、
「楽しい時間を過ごしてくださいね!」
と、返事した。



優大くんは、
『大丈夫ですか?オレが他の女の人と会っても深雪さんは嫌じゃないですか?』
と聞いてくる。


「……それ、ヤキモチ妬かせたい感じですか?」
そのくらいなら、私は全然妬かない気がする。

逆の立場なら、優大くんは妬いてくれるかもしれないけれど。



『……ちょっとくらい、妬いてもらいたい感じです』
優大くんが笑いながら言ったから、
「信じてますから、大丈夫です」
と、私も笑って返した。






その日の夜、7時頃。


「黒猫」にひとりの女性が来店した。


……キレイな人!

華やかで、上品な雰囲気がする。



接客していると、ふんわりと香水の良い香り。