苺にはもうなれない


付き合った男の人から、
『時間の無駄』
なんて言われなかったかもしれない。


浮気なんてされなかったかもしれない。



愛してもらえたかもしれない。







「透子さん」

名前を呼ばれて、ハッとした。



「私、お節介だとは思ったんですけど……、食材を買ってきてて」

日向の手に、近所のスーパーのレジ袋が下げられている。



「お昼ごはんを作りますから、一緒に食べませんか?」




「えっ、いいの?」


そう言うと、私のお腹がきゅるっと鳴いた。




「あはっ」

思わずふたりで笑う。





「ねぇ、『シー・ファンキーズ』の新曲って聴いてる?」


レジ袋の中の食材たちを取り出しつつ、日向にずっと話したかったことを話す。